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ゲームの感想などを書いてます。

アオイトリ/Purple software 感想

【評価ポイント】

基本的に、あらゆる項目において標準は大きく超えていると思います。
流石パープルソフトさんといった感じでした。
特にシナリオ構成に関しては、あかりルートを如何に際立たせるかが緻密に計算されていて素晴らしいの一言だと思います。
また、音楽(特にBGM)に関しては、私が今年プレイした作品ではトップレベルの出来栄えでした。
CG、キャラに関しても高水準であったと思います。

【マイナスポイント】

あかりルート以外がシナリオとしてインパクトがやや弱かったのが、個人的に残念な点でしょうか。
前作の「アマツツミ」の場合、「こころ」「響子」「愛」の本筋ルートを受けて、文字通り「辿り着いた」ほたるルートだったのですが「アオイトリ」は「あかり」ルートを主軸に考えた場合、他のキャラのルートがIFに近い形になったのも影響しているかもしれません。

また、原画家さんの体制が今回は今までと違うわけですが、やはりこれまでに比べると差異はあったかなあというのが正直な感想です。
初の作品にしては良く合わせてきたと思いますが、体制を変更したメリットをプレイヤーが享受できたかという点では疑問符がつきます。
まあスタッフの体制については、社内の事情や戦略に寄るところが大きいのでしょうが。
(ただ、その場合ロープラ作品のほうももう少し宣伝を考えるべきではと思いますが・・・)

【評価度】

評価度:9
「アマツツミ」の後の作品且つ似た雰囲気ということで、どこまで楽しめるか最初は不安でした。
しかし当初の期待値よりはずっと高いところに着地したと思います。

【おすすめ度】

おすすめ度:9
前作に引き続き、複数の女性と関係を持つ格好になるので、そのことに忌避感があると厳しいです。
ただ、誰かを選んでからは基本的にそういった関係を避ける方向に向かうので、前作ほど気にする必要もないと思います。
その上で、最初にも記載しましたようにあらゆる面でハイクオリティなので、是非プレイして欲しい作品ですね。

【その他感想】

購入してからクリアするまで(実際には手をつけるまで)に時間がかかりました。
やっぱり前作の「アマツツミ」がとても素敵な作品だったので、それと比較するとどうなんだろうというのがずっと心にあったからだと思います。
まあそれでも結局こうして楽しめたので、良かったというのが最終的な感想ですね。
以下に少し具体的な感想を記載します(あかりルートに対する思いは最後に)。

シナリオ構成については前作同様、メインヒロインのルートが強く引き立つ格好になっている一方、それ以外のルートについては色々と工夫してきたことが伺えました。
今回の試みはとても良かったと思いますが、それだけに個々のルートでもう少し強さが欲しかったかなあという思いも。
キャラに関していうと、デザインや在り様についてはメアリーが非常に好きですね。
ただトゥルーのルートにはあまり深く関わらないので、インパクトという面であかりと二分されてしまったかなという印象です。
(「アマツツミ」の場合、一番好きなキャラがほたるであったこともあり、逆により高評価に繋がった格好です)
上記の理由で、シナリオとキャラに関しては「前作と同等以上」までは行かなかったですね。

 

音楽に関しては、BGMが個人的に良かったなあと思っています。
特にオープニングのアレンジである「THEME」シリーズは、前作同様に作品にピタっとはまっていたと思います。
楽曲に関しては、「アマツツミ」の方がという思いはあるのですが、そもそも「アマツツミ」が強すぎたという結論にしかならないと思います。
(特に「こころに響く恋ほたる」は私の中では、ここ数年のエロゲソングの中で間違いなく最上位に位置しているので)
2017年発売のゲームという点で見ると、間違いなくトップレベルで好きな曲達でした。

 

とまあ定性的な感想を固い感じで記載してきたわけですが、ここからは本題ともいえるあかりルートに対する所感を。
一言でいうと素晴らしかったと思います。
「普通」であるあかりの「特別」に対する羨望と絶望、憎悪は、あかりの独白から痛いほど伝わってきました。
理路整然としているようで支離滅裂で、その感情はダイレクトに理解できました。
その後の「トゥルールート」では、あかりの視点に立って追体験することにより、彼女が何を思い、何を望み、どうあろうとしたのかが細やかに描かれていて、特に彼女の「善性」を強く感じられました。
また、律に対する愛の深さも。
結末を知っているが故にプレイヤーとしては辛い思いで読み進めていましたが、そういった部分も含めて製作側の意図通りであったのではと思います。
作中では「普通」な人は「特別」な力をもってもやっぱり「普通」で、「特別」な人はその力を失ってもやはり「特別」と表現されていました(要は在り様なのだと)。
それに則るなら死の瞬間まで、愛する人のため或いは友人のために全てを偽ってみせたあかりは、やはり「特別」な存在だったのではと感じました。

作品を通して、印象に残ったワードが1つ(実際はもっとありますが)
「始まりにあるのは言葉」
この作品は、そしてあかりは、正にこの言葉を体現したような存在であったと思います。
あの独白も、生きたいという叫びも、日々の感謝の言葉も、それらがあったからあのエンディングに繋がったのだと。
そういった意味で、「アマツツミ」とは違った形で「言葉」を大事にした作品であったなと思います。

 

最後に、次のパープルさんの作品への期待を。
ぶっちゃけた話をすると、「ハピメア」クラスのキャラと「アマツツミ」クラスの音楽とテキスト、CG。そして「アオイトリ」のようなシナリオのギミックを持つ作品を期待します。
割と無茶なことを言っているような気もするのですが、それが出来るメーカーさんだと信じていますので、よろしくお願いします。
あと、3rdLiveの開催もなるべく早々にしていただけると有難いですね。
(EGGはとても良かった。しかし曲数が圧倒的に足りない・・・)