out-of-reality

ゲームの感想などを書いてます。

アメイジング・グレイス -What color is your attribute?/きゃべつそふと 感想

【評価ポイント】

まず何を言っても、シナリオ全体の構成ですね。
ここではあまり詳しくは語りませんが、各ポイントに散りばめられた伏線は見事で、その伏線が1つ1つ回収されていくときにはゾクりとする感覚すら抱きました。
また、ラストに向けての盛り上がりは、シンプルに激アツでしたね。
加えて、それぞれのヒロインが非常に魅力的かつ個性豊かだったのも好評価です。

【マイナスポイント】

主軸となるお話は素晴らしいのですが、個別の「ルート」となると若干弱かったかなあという印象でした。
あと、「最後の困難」の解決に至るまでの流れは駆け足に思えたので、もう少し丁寧に描画して欲しかったかなという思いもあります。

それと、「推理モノでなくノベルゲーム」なため、プレイヤーとしては気にかかってる事象でも主人公が気にかけないとその謎が解明されないため、「何でアレを調べに行かないんだ!」的な思考になることは何回かありましたね。

【評価度】

評価度:9
パッケージおよびタイトルを見た瞬間から「これは良さそうだ」と思っていたのですが、想像以上に刺さりました。
10を付けようか迷ったのですが、自分の中でトップに位置付けている「ハピメア」と比較すると「マイナスポイント」としてあげた点で引っかかったので、「10に近い9」という評価になっています。

【おすすめ度】

おすすめ度:9
ループものがイケる口であれば、プレイすることをお勧めします。
キャラが可愛いですし、何より楽しくて感動します。
個人的には、やはりユネがイチオシです(とってもピュア)。

【その他感想】

今回は流石にネタバレがきついので、以下は白文字で記載します。
読まれる方は、反転して読んでください(ただしネタバレには本当に注意を・・・)。

大雑把な評価は上に記載したとおりで、「非常に刺さった」作品でした。
前作の星恋で漠然と感じていた不満(というか改善して欲しい点)を見事にひっくり返してきて、正直驚きました。
もちろん今作にも「こうして欲しかった」的なポイントはあるのですが、それよりも良かった点、優れていた点を評価したいというのが率直な思いです。

評価のポイントとしては、伏線の張り方は本当に良かったと思います。
その大半が「超高度なロジック」で成り立っているのではなく、「きちんと時系列に並べてみれば当然の流れ」になっていて、そのことが判った瞬間の カタルシスは相当なものがありました。
何よりそれを強く感じたのは、リンカが町の中に突入してきたシーンでした。
シュウが何故オーロラの中にやってきたのかという根本の疑問を、一瞬にして綺麗に解決してしまったのですから。
「そうだよ、普通に考えりゃ中でやばいことが起こることに気づいた奴が手引きしたに決まってるじゃん。そしてそれに当てはまる奴いたじゃん」と心の中で突っ込んでいました。

実は、一番最初にこの作品は「良い」と感じたのは、キリエのルートでした。
最後にシュウがした質問に対して、キリエがきっぱりと「思わない」と答えたシーン。
このシーンだけでも、このルートには意味があったのだと感じました。
「正史」を辿れば見ることはないルートなんでしょうが、その中で垣間見えた彼女の本心。
それに触れられたことが、そのときは嬉しかったですね。
まあ言葉の意味を正しく理解するのは、ずっと後になってからだったわけですが。
コトハがずっと言っていた「女優キリエのファン」という事に何となく違和感を抱いていたのですが(だって女優としてのファンなら、自分が監督をやってでもキリエに役をやらせるじゃないですか)、まさかそうなっているとはって感じでした(ギドウ、哀れ・・・)。
そういった、細かい演出の仕方も含めてとても見せ方が上手かったなと思います。

また「クサい部分の匂わせ方」も上手かったかな、と。
特にサクヤとの関係性は秀逸の一言です。
プレイヤーの大半は、一緒にループしているのはサクヤだと早い段階で気づいたと思います(自分もそうですが)。
しかし、その理由が何故か見えてこない。
そもそもの目的がどこにあって、何を望んでいるのかが。
そこからクライマックスに向かう流れは、まさに怒涛で半端無い盛り上がりであったと思います。

主犯であるギドウについても、良い味を出していましたね。
彼が犯人であることが判明してから滔々と語られる本心と苦悩。
主人公たちが決して嫌いではないのに天秤にかけざるを得なかった境遇。
そんな中でのコトハとのやり取りは、本当に心を打つものがありました。
コトハがあのような厳しい言い回しをするのが驚きで、でも「ギドウのことを心から認めていて、良きライバルと思っているから許せないんだな」ということがヒシヒシと伝わってきました。
このシーンでもう涙腺が崩壊していましたね。

そしてその後に来るのがサクヤの独白という。
アオイトリ」でも似たようなシーンがありましたが、こういうシーンはガチで堪えますね。
特にサクヤの場合は、退くもならず行くもならず、そんな中で好きな相手の記憶を消してしまわなければならないという、非常に過酷な運命を背負ってました。
しかもそれが幾度もループするという。
あの笑顔の裏にどれだけの涙があったのかと思うと・・・。
BGMが「アメイジング・グレイス」なのも本当にズルい・・・。
あんなのこっちも号泣してしまうしかないですよ。
ユネのルートにたどり着くためにはそんなサクヤを拒絶しないといけないのだから何とも辛いものです。
ただそこでサクヤを選んでしまうと、ずっと想いを秘めてシュウに力を貸していたユネを選べないのだから、究極の選択でした。
サクヤにしてもユネにしても、だからこそその後のルートでの笑顔は尊くまぶしいものがありました。

語れることはまだまだありそうですが、ひとまずはこのあたりで。
最後に言うこととしては、「とても楽しかったです」ということと「とても感動しました」の二言でしょうか。

今作を生み出してくださったきゃべつそふとの皆様およびスタッフの皆様
本当にありがとうございました。