ハッピーライヴ ショウアップ!/FAVORITE 感想
移りゆく花のように
【シナリオ】
「さくらもゆ」等と比べると、「泣きゲー」として落ちるのは間違いないです。
ただ、「仲間と力を合わせて上を目指す」「自分の本当の夢を叶えるために頑張る」というテーマを見事に表現していて、プラスのパワーが凄い作品でした。
たとえ暗い世の中であっても、彼女たちのその在り方、生き様、パフォーマンスを見ていると勇気が湧いてくる、そんな素晴らしい作品だったかと思います。
また、この作品に関して特筆すべき点として、「ヒロイン同士の掛け合い」があると思います。
大抵の作品だと「主人公とヒロイン」の話がメインになってしまい、ヒロイン同士の絡みはどうしても薄くなりがちですが、この作品はヒロイン同士がめっちゃ絡みます。
なんなら主人公そっちのけで。
そういった意味でも、非常に得難い作品だったなあと実感しています。
個別ルートに関しては「ペチカルート」と、実質的なトゥルーであると思われる「ソフィールート」が特に印象的でしたね(他のルートも満足のいくものでしたが)。
「ペチカルート」に関しては、「Re:」な物語だったと思います。
それも、「Re:」の再定義といいますか、非常に上手い話の展開だったなあと。
「ソフィールート」に関しては流石の力の入れようで、非常に感動的なものでした。
【キャラ・CG】
まあなんといってもジャンでしょうか(オイ)。
ヒロインを差し置いてコメントするもどうかと思うのですが、本当にいいキャラをしていて、アキトにとってまさに道標と言えるキャラだったのではないでしょうか。
(その分、多少頼りすぎな面もありましたがね)
で、ヒロインに話を戻すと、どのキャラも総じて魅力的だったかと思います。
・最初から最後までメインヒロインを貫いたソフィー
・もっともギャップが激しくて可愛かったカーチャ
・ハチャメチャなパワーで皆を巻き込んでいく割に自分のことになると弱い一面も見せるルー
・口調は悪く手も出やすいのに、とても面倒見が良くて親しみやすいペチカ
・ある意味アキトの「壁」であって、誰よりもアキトをみていたミヤビ
本当にいいキャラが揃っていたかなあと思います。
【BGM】
最高でした。
それ以上の言葉は野暮かなあと思うぐらい、レベルが高いものだったかと。
FAVORITEさんのBGMは、個人的には業界で随一だと思いますね。
本作で特に好きだったBGMを上げると
「パ・ド・トロワ」
「乗り越えるべきもの」
「いつまでも隣で」
「夢へとその手を伸ばして」
「MAGICAL∞SHOWTIME!! Feat.〇〇〇」
あたりでしょうか。
特に主題歌のアレンジは、センスがヤバ過ぎてヤバかったです(語彙力・・・)。
【歌】
主題歌に関して正直なところ、またとんでもない曲をぶっこんできたなあというのが率直な感想です。
ムービーの尺で聴くと「普通かなあ」という印象だったのですが、フルで聴くと(というより曲のテーマ性を理解すると)その世界観と表現力に圧倒されました。
前作の主題歌と毛色は違う、しかし同等以上に素晴らしい曲だったかと思います。
あと、各ルートのEDも素晴らしい仕上がりになっていて、早くサントラが欲しいなあと強く思っています。
【システム】
「さくらもゆ」からガラっと変えてきましたね。
画面サイズの可変は有難いのですが、スタンバイ状態から復帰するたびに微妙なことになっていたりしたので、もう少し改善の余地はあるかなあと思いました。
以前にも言及したような気がしなくもないですが、システム周りに関してはサガプラさんが最優だと思っているので、それに近づいていくと嬉しいかなあと。
【評価度】
評価度:9
もう一段上の評価にすることも考えたのですが、
・「ミヤビルート」が消化不良なのは否めない
・ルーやアキトの親との対峙が無かった点
・ソフィー以外の各ヒロインとも、Hシーンはもう1つは欲しかった
辺りを鑑みて、最終的には「9」になりました。
それでも期待以上の作品であったことは間違いなく、ここまで「ただ、前を向いて頑張る」ことを表現した作品に仕上げてくださったことには感謝しかないです。
【おすすめ度】
おすすめ度:9
作品として王道且つ正道であることと、テキストの癖もなく読みやすい作品なため多くの人にお勧めできるかなと思います。
また、前述したようにヒロイン同士の掛け合いも多いため、そういうものが好きな方には特にお勧めしたいですね。
【その他感想】
体験版が出る前は「NEXT GENERATION」ということで、どういう作品に仕上げてくるのかなあというのが期待半分、不安半分でした。
いざプレイしてみると、見事にメインストリームに飛び込んできた感じでしたね。
キャラとシナリオが上手く両立していて、とても「私好み」な作品でした。
以降では、各キャラとルートに関して改めて振り返ってみたいなと思います。
まずはルーから。
ルーに関しては、体験版の時点から非常に「良い」キャラだった思います。
クラリスとのコンビは本当に良かったですねえ。
あのパワフルな言動も良かったですが、何よりも天真爛漫な笑顔が本当に素敵でした。
ルートに関しては、期待通りの内容ではあったかと。
中々に「特殊」な境遇なのは割と早い段階で察することができましたし、ある意味王道と言える展開でした。
ただ、あの展開になるのであれば、ルーの両親との対話は欲しかったかなあというのが率直な印象。
そこだけはちょっと残念でした。
次はペチカ。
こちらは体験版が終わった時点では、「案外悪くない娘かも?」ぐらいのイメージしかなかった感じでした(合流が最後でしたからね)。
ペチカは境遇がアキトに一番近い且つ年上ということもあり、ヒロインの中で唯一アキトに強く出ることができるキャラで、そういった意味で重要なポジションだったと思います。
また多少粗野でやりすぎな面はあるものの非常に面倒見が良く、多くのヒロインが彼女に助けられていたのではないでしょうか。
ぶっちゃけた話、製品版をプレイする前と後で一番印象が変わったキャラでした。
ルートに関しては、「過去との決着」がテーマとなっていて、かなり胸に刺さるストーリーでした。
「あの時の夢」はもう全てが終わっていて、諦めていて、それでもなお残ってしまっていた傷。
その傷ともう一度正面から向き合い、新たな夢を手に入れる。
そんな、素敵なお話であったと思います。
次はクラリス。
クラリスに関しては、攻略キャラとしては一番楽しみにしていたキャラです。
理由としては、ヒロインたちの中で唯一アキトに対して距離があったキャラなので。
ただ話が進んでいくと、どんどんアキトに惹かれていって。
多分に、クラリスもまたアキトと違い境遇にあったというのも一因なんでしょうね。
アキトは完全にあきらめてしまったけど、クラリスはその一歩手前にいる感じで。
「似たもの同士」ゆえに、より強くアキトに引き付けられたのかなあと。
しかも嫉妬しやすい性格でもあったので、良いキャラ付けではあったものの、割と辛い立場だったかもしれません。
それでも他のヒロインとアキトの恋を祝福する彼女は、とても眩しいものに移りました。
どのルートでも、クラリスには良い人を見つけてほしいですね。
ルートに関しては、途中までは平凡かなあというのが率直な印象。
ただ、アキトと付き合いだしてからは急激に加速していった印象でした。
特に、ラストの舞台での彼女の「表現者」としての在り方と心境の変化は感動的で、涙誘われました。
きっと、苦難の道を歩んできた彼女だからこその感動なのかな、と思いましたね。
次はカーチャ。
カーチャに関しては、傍目には非常にギャップが激しいキャラだったと思います。
ただカーチャ本人にとっては、常に一貫していたようにも感じました。
自分の好きなものを好きと言い、大切なものを慈しむ。
後になって振り返ってみると、常にそのように行動していたかなと。
おそらく、天性の才能と強い芯を兼ね備えたがゆえに出来るものなのかと思いますね。
もっとも、それゆえの孤独も常に付きまとっていたわけですが。
ルートに関していうと、他のルートではソフィー達とひたすら楽しくやってた印象が強かったです。
カーチャルートについては、なんというか「さくレット」の「蓮ルート」に近い印象を受けました(ツイッターでもコメントしましたが)。
一言でいうと「ラブロマンス」。
恋知らぬ少女が初めて恋を知り、それとどう向き合っていくかが上手く表現されていたなと。
またカーチャに関しては天才ゆえの落ち度というか、それまで向き合う必要もなく前に進むことが出来ていた課題があって。
それに改めて向き合った後の姿は、とても美しいものだったと思います。
次はミヤビ。
攻略ヒロインの中では最も出番が少なく、ソフィールートと自身のルートのみ。
第一印象で彼女がお気に入りだった私としては、なんとも待たされた気分でした。
キャラ性に関してはとても好みな部類で、アキトとの関係性も良い感じでした。
ソフィールートで彼女がアキトやソフィーに向けた感情は、客観的にみると理不尽なんでしょうが主観的にみるときっと正しくて、感情移入してしまう場面が多々ありました。
一方でミヤビルートに入ると、1つ1つの言動が非常に可愛くて、もっと見ていたいと強く思いましたね。
で、ルートに関する話をすると、やっぱり短いと言わざるを得なくて、多少の減点材料にはなってしまったのは否めないです。
ただ、「ハピメア」の舞亜ルートよりは体感的にマシであることと、「さくレット」のアララギのようにルートすらなかった例を鑑みると、まあやむを得ないかなあと思わなくもなかったり。
一応個人的な解釈としては、ミヤビルートをまっとうに作ってしまうと、今作の実質的なトゥルーと思われるソフィールートと反発する格好になってしまうのかなと思っていて。
なのでこういった形になったのかなという思いもあり、ひとまずは折り合いをつけた所存です。
ですので、今後続編やFDで「シン・ミヤビルート」が描かれることを切に願っています!!!。
そして、最後にソフィー。
ソフィーに関しては、最初から最後までアキトに惚れている、まさにメインヒロインといったキャラであったと思います。
他のヒロインのルートでは、自身もアキトのことを好いているにも関わらず笑顔で二人を応援していて、そのいじらしさが少し切なくなりました。
ルートに関しては、途中までの展開は正直好みではなかったです。
正確に言うと、「アキトと同じ感情を抱いてモヤモヤしていた」感じです。
なので、ゲームの製作側としては「狙った通り」になるのではないでしょうかね。
ソフィーがアキトのために「魔法を頑張る」「プロになる」と発言するたびに、段々と心に澱みがたまっていきました。
このあたりをプレイしている最中は、「XXXHOLiC」の侑子さんの言葉が常に頭をリフレインしていました(1巻の後半あたりの、「行動と誠意」の話ですね)。
なので、なんとも不安でやきもきしながら読み進めていたのですが、最終的には理想的な着地点に持っていってくれました。
彼女が魔法を頑張る理由。
それは、彼女がそうしたいと思ったから。
とても単純で、それでも大切なこと。
また、彼女がそうしたいと思った理由が、物語の原点に回帰しているのも非常に感動的かつ上手い作りだなあと思いました。
この話の展開には最大限の拍手を贈りたいと思います。
暗い過去と優しい心と素敵な仲間、そしてアキトへの憧れを抱いた彼女だから目指せるもの・表現できるもの。
それはきっと、ポカポカでキラキラなステージになるんでしょうね。
感想記事の一番初めの一文は、大体がその作品のキャッチフレーズだったり印象的なワードだったりするのですが、今回は実は違っていたりします。
ソフィールートのラストの方でこのワードが浮かんできたので、あえて選んでみました(ネタ元はググればすぐに出てくるかと)。
あらゆるものは思い出に変わっていき、人もまた移ろっていく。
それでも隣で一緒に歩いてくれる人と大切な思い出があるのなら、それで良い。
そんな、儚くも温かいメッセージを受け取ったのだと、思っています。
そんなわけで、いくつかの部分で「こうして欲しかった」という思いはあるものの、総体として評価すると、「非常に良い」作品でした。
この作品を生み出してくださった皆様に、謝辞を述べたいと思います。
また、FAVORITEさんの今後にもとても期待ができるものであったと思います。
まあ次の作品はハラショウの続編だと信じていますが。