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ゲームの感想などを書いてます。

さくらの雲*スカアレットの恋/きゃべつそふと 感想

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「あの桜の雲へさよなら」

【評価ポイント】

まず、総じてクオリティの高い作品であったと思います。

シナリオ、CGもさることながらBGMや演出に関しても「アメイジング・グレイス」から明らかにパワーアップしておりトップ水準であったと思います。

システム面ではセーブ数がもっと欲しいことを筆頭に幾つか改善点はありそうですが、問題ない水準ではあると思います。

 

【マイナスポイント】

あえて言うとすると、最後のルートの「敵」との最終対峙のシーンでもう少し盛り上がりが欲しかったかなとも思います。

解決法などは問題無いのですが、複数のシーンが途中でカットインすることもあり、すこし気勢を殺がれた感があったかなと思います。

【評価度】

評価度:10
これ以外の評価は無いでしょう。

作品が発表されてからずっと期待してた作品ですが、見事に応えてくれたと思います。

【おすすめ度】

おすすめ度:10

評価の度合いは変われど、ほぼすべての人にとって「面白い」と感じる作品なのではと思います。

シナリオ自体も良いのですが、キャラとの掛け合いであったり展開の仕方であったりが見事で、また読みやすい作品でもあると思います。

【その他感想】

まず最初に、この作品で一番賞賛出来る部分を。
それは「プレイしていて楽しい」ということだと私は思っています。
ハイクオリティなシナリオゲーは数あれど、ここまで「楽しい」と感じるゲームは今までプレイした記憶が無いです。
エロゲとしての「楽しさ」と、シナリオゲーとしての「感動」を見事に両立した作品だと思っており、その点にこそ最大級の賛辞を贈りたいと思いました。

以下は個別ルートに言及していますので、シナリオのネタバレが多分に含まれます。

まだクリアしてない方はご注意ください。

 

 

 


・遠子ルート
まず4章の終わりの部分などから、遠子が怪盗ヘイストと深い関係であることは(読み手にとっては)容易に想像がつきました。
そのうえで様々な描写から「メリッサが怪しい」方向にミスリードされたわけですが、この点についてはまんまと嵌っちゃいましたね。
とくに歯車を奪取する場面の描写でほぼ確信しちゃってたので、まあ上手いこと騙されました(くそぅ・・・)。
で、上でも記載したように遠子が犯人とつるんでることはあっさり分かります。
ですが、その件を追求するために司が遠子と対峙するシーンは、本当に感動的で心にくるものがありました。
「予想していたのに、なおこの衝動か・・・」というのが率直な感想。
司が遠子を、遠子が司を想い合っているのが読み手からすると痛いほどわかるので、1つ1つの言葉が凄く心に響きました。
また、リーメイとの過去の清算に関しても、お互いの心の機微が見事に表現されてて「私には裁く権利はない」と言った遠子と、その言を受け取ったリーメイの心情に思いをはせると、どことなく切なく、それでも少し暖かい心持ちになれました。

 

・蓮ルート
ひたすらに蓮ちゃんが可愛いルートでした。
あの「文」はちょっとズルいと思います。
また、「私に恋を、教えてくれますか」というセリフ。
心がときめくとは、こういう感情なのかと実感しました。
シーン描写だけでいえば「ありきたり」なのかもしれませんが、その描き方とBGMがあまりに秀逸で、刺さりまくりでした。
そして、背中合わせのCG・・・。
もともと「背中合わせの絵」は大変好きな構図なので、もう「ありがとうございました!!!」って感じでした。
その後の二人が付き合い出してからの展開もハチャメチャに面白く、正直スクショが止まりませんでした。
たまーに?蓮ちゃんが見せる「獲物を狙う」かのような表情も大層良かったと思います。
シナリオ的な話でいうと「この先のルートに向けての布石」な面が強かったですが、それでも非常に満足できたルートでした。

 

・メリッサルート
今までのルートとはうってかわって、かなり本格的なミステリでした。
カヤノの千里眼→未来視に関しては手記1章の段階で想定済みでしたが、それでも読みごたえがありましたね。
この辺の展開と描写が本当に上手いと思います。
犯人の推理に関しては、怪しいと踏んでた人物(とその動機)は的中したのですが、第二事件の凶器までは流石に推理できなかったですね(毒というのは早い段階で分かったのですが)。
それにしてもこのルートは、メリッサと遠子の関係性が本当に良かった。
どれだけお互いを思い合っているかが見事に描かれていて、思わず感動してしまいました。
本来であれば辛いはずの過去を微笑みを浮かべながら語るメリッサ。
もう、それが全てだったと思います。
あと、景虎さんがイケメン過ぎましたね。
シャオリィのことを語る愁いを帯びた彼の姿は、このゲームでも屈伸のCGかと思います。
その後の後日談はとてもクオリティの高いイチャラブで、ニマニマしながら進めてました。
私服メリッサかわいー。


とか能天気なことを考えてたら、あの展開・・・。
いや、話の持って行き方がヤバすぎるでしょ。
鳥肌が立ちっぱなしだし、アララギのあのセリフがちょうど頭によぎったタイミングでそのCG挟み込まれるし。
しかもOPのBGMが完璧に合わさるという仕掛け。
ここまで完璧な「引き」は、クロスコンチェルトの最終ルートへの入りを思わせる出来栄えでした。

 

・所長ルート
いわばグランド√なだけあって、その展開・熱量が半端じゃなかったです。
今までのルートでは掘り下げられなかった司の過去にもフォーカスした形となっていて、非常に読みごたえがあり感動的でした。
司の過去(と未来の情勢)を把握し、それでも司を「未来へ帰してやる」と言った時の所長の台詞と意気は、感情の全てを持って行かれるレベルで心に刺さり、咽び泣いてしまいました。

魔人と万斎の関係性については、「何かしらあるんだろうな」ぐらいにはあるんだろうなと思っていたのですが、はっきりと認識したのは「あの装置」が実際に登場したシーンぐらいだったでしょうか。

それと同時に、魔人に対する対抗策というものも何となく察することが出来ました。

思うがままに過去改変を行っていた彼が、その結末として消滅するのは何とも因果応報で、そういうところも「上手い」見せ方だなあと感心しました。

事件を全て解決して司が未来に旅立つまでのお話は、「るろ剣」の志々雄を倒した後と似た感覚で、こういう風情がある展開は非常に良いと思います。

(特に、雪葉の「償い」というワードが十本刀のそれと重なりました)

 

所長ルートを通して感じたのは、「時代の積み重ねの重さ」でしょうか。

今あるこの時代が、多くの人の不断の努力によって成り立っているということ。

皆の努力の結果、所長が美しいと表現した元号から「さよなら」した司。

彼ならきっと「より良い」未来を築いてくれるものでしょう。

魔人が過去にまで転移して何を改変したかったのかは分からないままでしたが、願わくば彼が本来叶えたかったことも叶っていればと思います。

 

 

最後に。

「さくらの雲*スカアレットの恋」という素晴らしい作品を生み出してくださった、きゃべつそふと様とスタッフの皆さまに謝辞を。

作品が発表されたときから期待感MAXであったにも関わらず、その高いハードルを余裕で飛び越えていったことには驚きと感動しかありません。

本当に、本当にありがとうございました。

どうか再び、今作のような素晴らしい作品を作っていただけることを祈っております。

 

あと、アララギちゃん攻略ルートがないバグは早急に解消していただけると助かります<(_ _)>。