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ゲームの感想などを書いてます。

サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う- /枕 感想

【評価ポイント】

この作品の最大の評価ポイントはシナリオ構成にあると思います。
各ルートで必要な情報が過不足なく開示され、終盤に向けて全てが収束していく様は、それ自体が一つのアートであったと思います。

また、節目節目で語られる各キャラの想念はとても美しく、凄烈で、それでいて儚い。
まるで淡雪か、桜の散る様を想起させるものでした。

【マイナスポイント】

某キャラに関しては最後まで「ウザい」以上の感想が持てなかったですねー・・・。
正直、プレイ意欲に大きく影響したのは事実です。
それが作品の中で必要な存在であれば、キャラ性に納得は出来ずともストーリーとして受け入れることは出来るのですが、うーん・・・っといった感じでしょうか。

【評価度】

評価度:10
私の中で、「ハピメア」「さくら、もゆ」と並ぶ最大評価作品となりました。
美少女ゲームとしての到達点の1つ、と考えても良い作品だと思っています。

【おすすめ度】

おすすめ度:9
10をつけるか迷ったのですが、マイナスポイントに書いたキャラの事とTRUEのルートが「まだ終わってない」事がネックになったので、9に留めています。

【その他感想】

2017年にソフトを購入して、ようやく終わりました。

山を越えれば驚くほどスムーズに進んだのですが、そこを超えるまでが中々に厳しかったですね。

最初のルート(多分「真琴」ルートかな)を乗り越えれば、ルート構成などもある程度把握できて進め方の目途が立つと思うので、これからプレイされる方が居れば、まずは1ルート終えるところまでを目指して欲しいですね。

で、この作品は最後までプレイすると、語りたいこと・語るべきことが色々あるように思えるのですが、果たして何から語ったものか。

 

 

1つはまあ、「御桜 稟」という存在に対しての思いでしょうか。
キャラデザや性格等から、作中において一番好きなキャラクターではありました。
それ自体はプレイ初期段階から最後まで変わることが無かったのですが、「思い」の質に関しては変遷がありました。

・最初は、漠然とした「良いキャラだなあ」という思い
・その後、その才能や在り方に対する畏怖
・最後に、ただ「救われてほしい」という思い

私にこう思わせたキャラは、ハピメアの「舞亜」を措いて他には居ないです。
つまるところ、私の中で予想以上に大きな存在に育った、ということでしょうかね。

 

2つめは、「救済」について。
救済というと大仰に聞こえますが、主人公の草薙直哉クンは実は裏で色々と動いていたりします(主に誰かを助けるために)。
それはきっと当人が望んだことであるのは間違いないのですが、視点を別に移すとどうなるのだろうか。
どこぞの征服王の言葉を借りるわけではないですが、彼はただ救うだけでその代価を受け取ることはしなかった。
それがため、あのTRUEのルートに至ったのではないかと思わざるを得ません。
折々で正しく代価を受け取っていれば、痛みを分かち合っていれば、あるいは違った結末もあったのでは、と。

 

3つめは、草薙直哉という男について。
上にも書いたように彼は作中で、もしくはそれより以前から、自らの事を顧みることなく周りの人を救おうと行動しています。
それは自己犠牲ではなく自ら望んだこと、あるいは単に選択の余地自体が無かったことではあります。
それが正解だったのか誤りだったのか、その回答は示されていません。
ただ1つ思うことは、そういった道を辿って彼が辿り着いた「結論」は、きっと正しいものであるということ。
そう信じたいと願う自分が居ました。
作中での彼の行動すべてに共感できるわけでは無かったですが、きっと「この先」においては光をつかんでくれるものと信じています。

 

4つめは、至る結末について。

サクラノ詩を受けてサクラノ刻につながるはずですが、その「刻」についての思いを少し記したいなと。
現時点で公開されている情報等から推察すると、過去から現在にかけての時間的な「縦方向」の因果交流の結末として、クライマックスに至るのではないかと思っています。
(ティザーサイトを見ただけだと美術部員が攻略対象になってそうに見受けられましたが、そうではないっぽいので一安心?しました。

そうなった時に、私として思いが向いてしまうのは、やはり稟についてです。
最終的に(もしかしたらルート途中かもしれませんが)、彼女と対峙して向き合うことになるのではと思っています。
もし、そのような状況になるのであれば、直哉にはどうか彼女の「孤高」を打ち破って欲しいと願っています。
きっとそれが出来るのは、現在において直哉ただ一人だと思うので。


 

さいごに、全体を振り返って改めて。
各ヒロインのルートに関しては、ぶっちゃけた話あまりコメントが無いというか、単純に、とても綺麗にまとまっていたかと思っています(「真琴」ルートはちょっと割をくってるかもですが)。
無論、色々と受け取ったモノや感じたことはあるのですが、TRUEのルートを終えた時で振り返ると、細々と言及するのは無粋に感じています。
その中であえて特筆するとすれば、里奈と優美の関係性でしょうか。
特に里奈の思考についてはやや驚かされ(もっと飄然としたキャラだと思っていたので)、それ故「あのルート」の危うさをも秘めた終わりは、ある意味でとても甘美だったのかもしれません。
(あと単純に、一番エロかったのでは?という疑惑も)

というか、TRUEのルートを辿った時に、この2人は結局どうなってるんでしょうね。

 


芸術を扱う作品として、私の中には「神曲奏界ポリフォニカ」が常にあります。
あちらは音楽がテーマですが、描かれる人間模様などは割と似通るもので、この作品をプレイする中で、「ポリフォニカの世界に当てはめるとどうなるだろうか」という思いが度々浮かび上がりました。
アチラの世界では、天才だの才人だのが色々と、本当に色々と事を起こすので、とてもいい比較材料になったかと思っています。

結局のところ、才能というものにどう向き合うのか。そして、余人に対してどう接するのか。
それがきっと、この手の作品の統一的なテーマなんでしょうね。
そういった意味で言うとTRUEのルートで直哉が辿り着いた答えには共感でき、稟の在り様に関しては、辛い。
そう感じてしまいます。
それを含めて、この作品の美だとは思うのですけどね。

 

美しく、感動的で、そして寂寥感が募る作品。
それが、全てをクリアした後で振り返った時にこの作品に抱いたイメージでした。

はたして、「サクラノ刻」が終わった時にそのイメージがどうなっているのか、楽しみでもあり怖くもありますね。
今はその発売を、ただ待ちたいと思います。


私としては、稟がかつての笑顔と意気を取り戻せることを、祈っています。
だから、仮に直哉が稟と対峙することになった場合、稟がどれだけ圧倒的でも負けないで欲しい。

「人の願いは 神様にだって届くんだから・・・!!」