out-of-reality

ゲームの感想などを書いてます。

その日の獣には、 /minori 感想

【評価ポイント】

個人的に1番に来るのは、やはりモーションでしょうか。
いわゆる「紙芝居」とは一線を画しており、何気ない会話でも受けるフィードバックは大きいです。
端的に言うと、「思わずドキッとする」シーンが多かったです。
あと、ちょっと意外というか想定外だったのが、個別ルートに入った後のイチャラブですね。
当初思っていた以上にクオリティが高くて、楽しませていただきました。

劇伴(BGM)に関しても、ても良かったと思います。
特に主題歌でもある「Limelight」のアレンジは作品とのマッチング性が非常に高く、まさに「劇伴」でした。
正直、これだけでもお金が取れるレベルにあると感じました。
また、主題歌自体も八ッ橋しなもんさんの声と上手く融合していて、レベルの高かった19年の作品群の中でもトップランクかと思います。


最後は、作品としてのメッセージ性ですね。
祈莉ルートまで全てプレイすることが前提とはなってしまうのですが、作中を通して伝えたかったことと、作品の最後に伝えたかったことには強く共感を覚えました。
また、「台本」に関してのギミックと展開については、素直に賞賛したいと思います。

【マイナスポイント】

最初に来るのは、システム面でのストレスでしょうか。
一応Enterキーで読み飛ばしは出来るのですが、できれば画面内のUIとしてスキップ機能を実装して欲しかったという思いはあります。
特に、シナリオ寄りのゲームをする場合はHシーンを飛ばしたいことが多いので・・・。

中身的な話をすると、全体的なボリュームに関して不満というか「足りてない感」があったかなあと思います。
話の流れ自体は良いと思うのですが、要所要所おいてテキストや演出が尺的・量的な意味で足りておらず、イマイチ説得力に欠けるというか感情が乗り切らないシーンがありました。
(それでも、祈莉ルートに関してはじゅうぶんだと思いますが)

【評価度】

評価度:8

序盤は「結構微妙かも」と思ってましたが、各ヒロインのルートに入ってからは楽しかったです。
祈莉ルートに関しては伏線もほぼ回収し、且つその内容もとても胸に刺さりました。

【おすすめ度】

おすすめ度:7

やっぱり序盤のキツさがネックにはなります。
あと、「演劇」というテーマが刺さる人がそもそもあんまり居ないんじゃないかなあという思いもあり。
売り上げが想定より伸びなかった理由も、恐らくその辺にあるのではと個人的には思っています。

【その他感想】

作品自体の感想としては、評価ポイントとマイナスポイントに挙げている内容が殆どですね。

「最後までやると良い作品だった」

これに尽きるかなと。
トリノラインでも感じたことですがラストのルートは私の感性とピッタリはまることが多く、おそらく他にプレイされた人以上の評価になっている感はあります。
長々と寝かせてしまった作品ですが、最後までプレイして


そして、minoriさんの最終作となってしまった本作です。
心に宿る思いとしては大別すると2つですね。

「惜しいなあ」という思いと、「仕方ない、か」という思い。
今作に関しても最後までプレイして思うのはやっぱり、「良い作品だったな」という思いなんですよ。
道中割とキツイんですが、最後に示してくれる「結末」は(少なくとも私にとっては)凄く共感できるし、純粋な「感動」で涙誘われるものでした。
ですので、minoriさんの作品がもう出なくなってしまうのは、とても残念です。

一方で「仕方ない」という思いも確かにあるのですが、それは何故かというと、今の情勢に適合したゲーム作りが難しくなってるのが作中からでも伝わってきたんですよね(解散にあたってのコメントの中にもありましたが)。
作りたい内容と売れる路線がズレている中で何とかバランスを保ってきたが、売上的にも厳しくなったためにモチベーションが落ちたのかな、と。
落ちたモチベーションの中でゲーム制作が困難なのは、容易に想像できます。
そういう意味で、「仕方ない」ですね。

 

とは言え、フルプライスの商業作品としては、まだシナリオゲーの需要は一定数あると思うんですよね。
19年で高評価だった作品も、その大半がシナリオを評価されてのものだったと思いますし。

そういった意味では、まだゲームを出す余地は残っているのかと思います。
カムバックする可能性はほぼ無いものと思われますが、もし戻ってくるようなことがあれば、是非ともまた購入させていただきたいメーカーです。


ひとまず、最後の挨拶として。

18年間にわたって、お疲れさまでした。
また、素敵な作品の数々をありがとうございました。